こんにちは、ナス男です。
ブラック企業を一年で辞めたのち、今はナス農家をしています。
今日はナス栽培の「相棒」を紹介します!
「タバコカスミカメ」くんです!
実物は肉眼で発見できますが、アリより小さいくらいでしょう。
でもこいつは本当に頼りになる相棒です。
ナス栽培の救世主「タバコカスミカメ」
「え、虫がナスと一緒にいるの?悪さしない?」
「こんなちっちゃな虫がどんな働きをするの?」
と思われると思います。
タバコカスミカメは「天敵昆虫」で、
コナジラミやアザミウマ類を見つけて食べてくれるんです!!!
コナジラミ類、アザミウマ類は
- 繁殖スピードが速く、
- 被害が広がると収量がガクンと下がる
ナス農家にとって、2大害虫と言っていい最大限の注意をしなければならない存在。
天敵昆虫「タバコカスミカメ」の有能さ
「でもその2大害虫は農薬の防除でも殺せるんじゃないの?」
確かにそうなんですが、タバコカスミカメのいいところは、人間が農薬で防除するより確実に正確に害虫をやっつけてくれるところです。
タバコカスミカメは本能で害虫を探してるので、人間の目だと死角になって見逃がしがちな葉っぱの裏などにいる害虫も、捕食してくれます。
僕がナス栽培一年目の時、アザミウマの初期発見を見逃して大発生させてしまいました。
ナスの樹勢を落としてしまい、まともなナスを収穫できず、売上50万くらいを吹っ飛ばしました。
当時はきつかった…
まるで妹を鬼にされたような絶望感で、しばらく寝られなかったです。
崖っぷちに立たされた危機感から先輩農家さんにアドバイスを求めた時に、タバコカスミカメの存在を知りました。
僕なんかより確実に害虫を発見できる。
まさに頼りになる「相棒」です!
タバコカスミカメの培養、温存
じゃあそのタバコカスミカメはどうやって培養して温存しておくのかというと…
ハウスでクレオメなどの宿り木に寄生させて培養、温存します。
クレオメとは、白やピンクの花が咲くきれいな花です。
クレオメの花を観賞したい!わけではなく、
ナス栽培の相棒の、タバコカスミカメの宿り木としてクレオメを育てています。
僕の場合、上の写真のように苗場の一角でクレオメを育てて、そこにカスミカメを寄生させています。
タバコカスミカメはこのクレオメが大好物で、クレオメの葉を吸汁して繁殖して個体数を増やしていきます。
タバコカスミカメは、クレオメにとっては害虫!
だけど、ナスにとっては益虫なんですね。
クレオメ以外にも、ゴマなどはタバコカスミカメが好んで寄生しやすいので、そちらでもいいでしょう。
ちなみにクレオメの花言葉は、「秘密のひと時」です!
不倫している芸能人たちに贈るのにぴったりかもしれませんね(笑)
ハウスでクレオメを培養するのがおすすめ
タバコカスミカメは土着天敵で、自然にいる昆虫です。
春先に露地でクレオメを育てて、そこにタバコカスミカメを寄生させることもできるかもしれませんが、おすすめましません。
露地でのタバコカスミカメの培養をおススメしない理由は3つあります。
- 寄生しないこともある
- 個体数が増やしにくい
- 他の害虫が紛れ込んで定着してしまうかもしれない
順番に紹介します。
寄生しないこともある
外でクレオメやゴマなどを植えておけば寄生してくれるかもしれませんが、寄生しない場合もあります。
確実にタバコカスミカメを寄生させたいのであれば、タバコカスミカメを培養している人から譲ってもらって、自分で培養するのが一番確実です!
ただし、タバコカスミカメは天敵農薬としての登録がある県もあります。
むやみやたらに移動させたりできないかもしれませんので、まずはJAや都道府県の農業改良普及課に問い合わせてみてください。
2、個体数が増やしにくい
外でのタバコカスミカメの培養は、個体数が増やしにくいです。
冬の寒さで激減してしまうことと、雨や台風などで流されてしまうことが原因です。
ハウスの中なら気温がコントロールできるので冬も越せますし、雨や台風などで減ることもないです。
タバコカスミカメ以外の害虫も紛れ込んでしまう
露地ではお目当てのタバコカスミカメ以外にも、害虫が定着してしまうこともあります!
例えば、アオクサカメムシ。
名前は似ていますが、ナスの害虫です!
ナスの生長点を吸汁してしおらせてしまいますので、紛れ込ませてはいけません!
タバコカスミカメだけを増やしたいのであれば、やはりハウス内の方が安定しています。
タバコカスミカメは万能ではない
「タバコカスミカメ最強!」
「天敵ってすごい!全ての農家が使うべき!」
確かにタバコカスミカメがうまく定着して働いてくれているハウスは、殺虫剤を使う回数が減りますが、タバコカスミカメも万能というわけではありません。
じゃあ、害虫も捕食してくれて防除回数も農薬代も減らせるこの益虫が、定着さえすれば防除をやらなくていいかというと…
残念ながらそういうわけではないです。
- タバコカスミカメではカバーできない他の害虫がいる。(アブラムシ、ダニ類など)
- アザミウマやコナジラミより、繁殖に時間がかかる。
- 害虫だけでなく病気も対処しないといけない
以上の理由から、やっぱり防除は必要で、完全になくすことは難しいです。
もう一つ!
タバコカスミカメが死んでしまうような農薬は使用できません!
タバコカスミカメに限らず、天敵を使うと「農薬縛り」栽培になるので、農薬の選択の幅が狭くなってしまいます。
この「農薬縛り」が難しいと考える農家さんもいるので、天敵を導入する前によく考える必要があります。
まとめ:タバコカスミカメや天敵をうまく利用しよう!
今回は
「ナス栽培の相棒!天敵昆虫タバコカスミカメ」
について書きました。
農薬の話をすると、
「やっぱり農家は農薬をたくさん使ってるんだ!やだ~。」
って声も絶対にあるでしょうが、農家だって農薬は使いたくないんです!
できることならやりたくない、少しでも農薬を減らしたいとどの農家も考えています!でも、どうしようもなくなるその前!
でもいざというときには、迷わず防除します。
全てこれ一つでカンペキ!という対処方法はまだまだ出てこないでしょうね。
それでもIPMの一環、「生物的防除」として利用するのであれば、タバコカスミカメは絶大な力を発揮します。
今回の記事を参考にして、天敵をうまく利用してよりよい栽培ができるように工夫していただければと思います!
最後まで読んでいただきありがとうございました。