「就農に興味がある!何を作れば儲かるか知りたい!」
こんな感じで農業に興味を持った方の中にも、「儲かる作物」で検索した方もいるのではないでしょうか。
しかし!
その検索してヒットした「儲かる作物」に安易に飛びつくのは危険です!
今回は、
「儲かる作物を栽培し始めてはいけない!統計の落とし穴」
ということで、農家の僕ナス男が解説します!
農水省の品目別経営統計、地域ごとのデータ
品目 | 農業粗収益 | 農業経営費 | 所得 |
だいこん | 315 | 175 | 140 |
さといも | 412 | 151 | 261 |
キャベツ | 392 | 210 | 182 |
白菜 | 321 | 197 | 124 |
ほうれん草 | 342 | 160 | 182 |
品目 | 農業粗収益 | 農業経営費 | 所得 |
大玉トマト | 2595 | 1369 | 1226 |
ミニトマト | 4071 | 2043 | 2028 |
なす | 3514 | 1820 | 1694 |
ししとう | 3759 | 2296 | 1463 |
いちご | 3596 | 1698 | 1898 |
「儲かる作物」で検索すると、農水省の品目別経営統計がヒットするはずです。
もしくは地域の農政課などで、上のようなデータを見ることになるでしょう。
- 具体的な数字が見れる。
- 農業経営の計画書を作る資料になる。
- 農水省や自治体の公式のデータなので信頼できる。
ので、就農の際に参考にする方も多いかもしれません。
しかしこのようなデータを見る際に、「統計の落とし穴」に注意しなければいけません。
統計の落とし穴に落ちないための、注意しなければいけないポイントは大きく4つあります。
順番に解説します。
注意ポイント①表やデータの年度が古いと参考にならない
注意しなければいけないポイントの一つ目は、表やデータの年度が古いと参考にならないことです。
農業は毎年のように進歩している産業です。
1,2年ならデータとも差異はあまりないですが、5年さらに10年も経てば栽培方法や情勢は大きく変わります。
なので、データは正確でもそのデータの年度が古すぎると参考にならないことが多いです。
ちなみに僕が今しているハウスナス栽培でも、10年前と今とでは全く栽培方法や情勢が違います。
反収、設備投資、作業時間…別の作柄かというくらい違います!
農水省の品目別経営統計は、2007年を最後に更新されていません。
この2007年の統計を元に作物を選ぶのは、今の農業とは大きく違いがあるかもしれないことを念頭に入れておく必要があるのです。
ただ、営農計画書を作る時などにどうしても参考資料が必要なこともあります。
その場合はJAや農政課、先進農家が持っているデータが一番最新ですので、そちらを参考にしましょう。
農業に転職!就農は経営計画で9割決まる! | 就農成り上がりブログ (otikoborenouka.com)
注意ポイント②別の産地では参考にならない
注意しなければいけないポイントの2つ目は、別の産地のデータは参考にならないということです。
同じ作物でも、産地が違えば一緒の価格で取引されるわけではありません。
高い価格で取引される大産地と、そうでない地域があります。
そもそも気温などの環境面で栽培できない作物も当然ありますからね。
それぞれの地域に得意作物そうでない作物がありますので、市場価格や地域の農家の人の意見も取り入れて、より販売しやすい作物を選択するのがいいと思います。
注意ポイント③儲かる作物が自分に合うかは分からない
注意しなければいけないポイントの3つ目は、儲かるとされている作物が自分に合うかは分からないということです。
- 資本金
- 農地面積
- 地域ごとの特性
- 気象条件
- その作物の作業が継続できそうか
などなど、個人によって全く違うので、おススメされている作物を栽培すれば儲かるわけではありません。
例えば反収では儲からないとされている作物でも、たくさんの農地があなたにあれば利益は出ます。
労働人数が多いのであれば施設野菜が適しているかもしれませんし、牛舎や豚舎がいい条件で借りられるのであれば畜産が適しているのかもしれません。
個人的に大事だなと思うことは、その作物の作業が継続できそうかどうかです。
今後長い間その作物を作り続けるわけですから、継続できるかどうかは作物選びには重要なポイントになります。
ちなみに僕は白菜などの露地野菜を作るのが苦手でしたが、ナス栽培だけは性に合っている気がしました。
手入れや収穫の時にザクザク枝を切る感覚は好きでしたし、単純に楽しいし続けられると思えました。
まだまだ上手には栽培できてませんが、継続していれば栽培技術も少しずつでも上がっていると感じます。
「継続は力なり」は農業でもばっちり当てはまりますので、
儲かるかどうかの他にも、継続できるかどうかも作物選びの基準に加えてみることをおススメします。
注意ポイント④将来も儲かる作物かは誰にも分からない
注意しなければいけないポイント4つ目は、今は稼げる作物とされていても、将来も儲かる作物かは誰にも分からないということです。
もう令和は野菜を単に作れば売れるという時代ではないです。
災害や価格暴落が毎年のように起きていて、どの農家も儲かる作物を毎年探しています。
- 栽培する農家が増えすぎて供給過多になり、価格が下がるかもしれません。
- 温暖化によって、安定した品質の作物が栽培しにくくなるかもしれません。
- 消費者の嗜好の変化によって、需要が減っていくかもしれません。
- 補助金が投入されて、他の産地が一気に台頭するかもしれません。
今のデータでは儲かるとされていても、将来は誰にも分かりませんし、最後は自分で責任を持って作物を選ぶしかありません。
「この作物が儲かる!」
「誰でも簡単にできる!」
「○○栽培なら売れる!」
のような耳障りのいい言葉を言っている人がいたら、詐欺を疑ってください。
まとめ:じゃあ何をつくればいいのか!?
今回は、
「儲かる作物に注意!品目別統計の落とし穴」
というテーマで解説しました。
「じゃあ何を作ればいいんだよ!」
という話なんですが…
すいません、僕にも分かりません!
ただし、一生安泰な作物はないということは断言できます!
僕もナス栽培を長く続けたいけど、価格が下がってきたら続けられなくなることも十分に考えられます。
そりゃあ数年は大丈夫だろうと踏んでハウスを建ててナス栽培を始めたわけですが、10年先にナスの価格や情勢がどうなっているかまでは誰にも分かりません。
「時代の変化に対応できて、常に現状を改善していくような経営」が理想ではありますが、僕もまだまだできてませんので、毎日もがいています。
どの作物を選んでも楽して儲かることはないので、努力し続けるしかないですかね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。