作物選びのポイントをまとめた記事を、前回書きました。
ただ就農に興味のある方の中には、抽象的全体的なアドバイスより、具体的にその作物に決めた理由を知りたい方もいるかもしれません。
ということで今回は、
「作物選びの一例。私がナス農家を選んだ理由」
というテーマで、私ナス男が施設栽培のナスを選択した理由を書いていきます。
農業に興味のある方や、これから就農する方は、ぜひ読んでください!
ナス男の作物栽培遍歴
前置きとして、私ナス男の栽培遍歴をお話しします。
僕が就農した当初栽培していた作物……
米、スイカ、枝豆、キャベツ、白菜、ブロッコリー、カリフラワー、切り干し大根
10年経った今栽培している作物……
施設ナス一本!
作物を減らしてナス専作になった理由は、こちらの記事で。
今は施設栽培のナス一本で飯を食っていくことを選んだわけですが、
まず断っておきたいのが、他の野菜がダメだったわけではないということです。
作物を絞っていく段階では、他の野菜にも特徴やメリットがあり、とても魅力的でした。
ただ僕にはナスが向いていた、それだけです。
前置きが長くなりましたが、今回のテーマに戻ります。
僕がナスがいいと思った理由は大きく5つ!
①選果場が利用できたから
1つ目の理由は、私の地域にJAのナスの選果場があり、その施設が利用できたことです。
選果場のおかげで、毎日1000~2000本収穫する時期でも、荷造や出荷調整にかかる時間はほとんどなし!
選果場に持っていけば、選別から段ボール詰めまで全てやってくれるからです。
もちろんその分の手数料はかかりますが、ナス栽培初心者には出荷調整の時間を削減出来て、栽培に専念できるという大きなメリットがあります。
そして私はJA100%で出荷しようと考えていたので、デメリットには感じませんでした。
知らないと損をする!農家が教えるJA出荷のメリット | 就農生き残りブログ (otikoborenouka.com)
これが一つ目の大きな理由ですね。
②価格が安定しているから
2つ目の理由は、私の地域のナスの価格が安定していて、年間の売上が計算しやすかったことです。
作物転換する前にメインで栽培していた露地キャベツは、まさに乱気流のような値動きでした。
キャベツをはじめとする露地野菜は作付状況や天候、台風被害によって状況が大きく変わる作物。
- 安い時は1箱300~400円(8玉)出荷せずに潰すほど安く、
- しかし高い時には1箱(8玉)3000円以上!
「キャベツは5年スパンで売上を見ないといけない。」と言われるほど。
私は値動きの乱高下に胃が痛くなる経験を何度もしましたので、ナスの価格が安定しているということは、精神的にも良かったです。
③平均を超える農家がいたから
3つめは、部会平均を大きく超えるナス農家が複数いたことです。
全国でもトップレベルのナスの反収を毎年上げている篤農家の存在に気づいたことで、ナスが私の中で一気に有力な作物に挙がってきました。
そういうしっかりと利益を出す篤農家の方に、話を聞かせてもらったり働かせてもらったりさせてもらったので、自分のナス農家としての数年後がイメージしやすかったのは大きかったですね。
部会の平均や農政の作物の平均売上データだけを見ても、自分に合っている作物は見つかりません。
実際の現場とは違ったり分からないことがたくさんありますし、平均を大きく超える篤農家の存在に気づかないからです。
平均ももちろん大事なんですが、それを疑ってみると思いがけない作物が有力候補に挙がってくるかもしれませんよ!
④作業が自分に向いていたから
4つ目の理由は、ナスの作業が自分に向いていたからです。
収益性も大事ですが、作物と自分の相性も意外に大事です。
その作物の栽培が毎日の仕事になるので、つまらなかったり、辛すぎる仕事だと続かないだろうと考えていました。
その点、ナスの作業は師匠の所で一通りの作業を研修する中で、私が仕事としてずっと続けていけそうだと直感しました。
なんというか、楽しかったんですよね。ナスの収穫や手入れの時にハサミで切る音や感覚が!
ザクザク切って、樹がさっぱりして、まるで自分が美容師になったかのよう!
それに、仕事の成果として残渣が通路に溜まっていくのを見ると、もっと頑張ろうと思えたんです。
ナス栽培を始めて6年、おかげで苦闘しながらも試行錯誤を楽しみながら今も農業が出来ています。
⑤流行している作物ではなかったから
作付面積や流通量ががどんどん増えている作物ではなかった、というのも大きな理由でした。
「え!?流行に乗らないの?皆儲かるからその作物を始めるわけでしょ?」
と思われるかもしれませんが、これは農業ではよくある話。
儲かる作物や作型を後追いしても、大して利益は上がらないことが多いのです。
詳しくはこちらの記事で。
施設栽培のナスを選ぼうとしていた頃、
「なんで○○じゃないの?この地域なら○○をJAに売れば良くない?」
「ハウスは高いけど、その分反収もいいから借金は返せるよ!」
「養液栽培の技術も確立されてきているから、部会に入れば一年目から安定して収量が採れるよ。」
と数人の農家から地域の特産品の作物○○を勧められました。(〇〇は皆さんのご想像にお任せします。)
- 当時は一番利益を出している作物でしたし、
- 部会の人数や栽培技術も優れていましたし、
- 周囲で新しいビニールハウスもガンガン建てられていたし、
これはもっともな意見でしたが……
全国的にその作物の生産農家が増えていたことや、今後もその高単価が続くのかが分からないという不安も私の中にはありました。
その数年後、その作物の価格は下がり、あの時のような高値に戻っていません。
「今から新規で○○を始めるのは怖い、おすすめしない。」
と、今農業普及課やJAに相談すると、ほぼほぼこう言われるでしょう。
儲かる作物や流行に流されてはダメだと、今思い返しても考えさせられることです。
まとめ:ナスは儲かる!?
今回は、
「作物選びの一例。私がナス農家を選んだ理由」
というテーマで書きました。
じゃあナスは儲かるのかというと……
コロナショックやウクライナ情勢で、今は本当に利益を上げるのが厳しいです。
正直赤字を出す農家もいると思います。
今の時代、儲かるどころか利益がちゃんと出ると言える作物はほとんどありません。
たけど常に試行錯誤して上を目指す人は確実に利益を上げています。
どの仕事も一緒なんですが、結局儲かるかどうかはその人次第なんだと思います。
自分を信じて、常に試行錯誤をしていける作物を選ぶべき!!!
この記事が作物選びの時に、少しでも参考になればうれしいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。