「地産地消」という言葉が世間にも広く浸透しています。
農業でも地産地消の販売をしている方はいますし、地産地消という言葉にプラスのイメージはありますよね。
ただ、地産地消の農業に取り組むメリットもあればデメリットも当然あります。
ということで今回は、
「地産地消のメリットデメリット。私は地域で野菜を売らない理由。」
をテーマに、農家の私が地産地消について思うことを記事にします。
農業に興味のある方はぜひ読んでください!
地産地消のメリット
地産地消とは、=その「地」域で生「産」した作物を、その「地」域で「消」費すること。
つまり農業の視点では、自分が栽培した農作物や加工品を地元の産直やスーパーに出荷すること、となります。
農水省も、地産地消を推進しているとHPに書かれています。
地産地消(地域の農林水産物の利用)の推進:農林水産省 (maff.go.jp)
農家が地産地消に取り組むメリットとしては、
①消費者との近い関係
②鮮度と輸送コストが有利
③直売や加工品などの取り組みの中で地域が盛り上がる
主にこれらのメリットが挙げられます。順番に解説します。
メリット①消費者との結びつきが近く強くなる
地産地消のメリットの1つ目は、消費者との結びつきが近く強くなることです。
「誰がどこでどのように生産した農作物なのか分からない!」
狂牛病などで外国産への不信感が強まった時期もあり、距離が近い農家から買いたいという消費者の方も増えた気がします。
「どこの誰が自分の野菜を買ったのか分からないのは嫌、消費者の方ともっとつながりたい。」という意見を持っている農家も多いです。
そういう農家と消費者にとっては、地産地消はwinwinのビジネスモデルと言えるでしょう。
メリット②鮮度と輸送コストで有利性がある
やはり鮮度と輸送コストの面では、外国産や遠方からの野菜より有利に立てます。
収穫したその日に売り場に並べられることを、地産地消戦略は活かしきらないといけません。
生鮮食材の野菜であれば、2日違えば鮮度は歴然ですからね。
輸送コストが安い分を、価格でも有利に立てるはず。
SDGsという言葉も盛んに出ている昨今では、フードマイレージ(どのくらいの輸送エネルギーを使うか)も購買の選択肢にしている消費者も意外にいるのかもしれません。
メリット③地域が盛り上がる
地元産の野菜や加工品が地元で売られることで、地域の経済の活性化につながる、という意見もあります。
たしかに地域の農業も活性化すれば、農業を将来してみたいという子供も増えるかもしれませんし、放棄地問題も少しは改善するかもしれません。
産直が繁盛していれば明るいニュースになりますし、伝統野菜なども認知度が高まりそうですね。
地産地消のデメリットと私が地域で野菜を売らない理由
いいことずくめに見える地産地消ですが、デメリットも表裏一体で存在します。
私が地域で野菜を売らない理由もそこにありますので、併せて紹介します。
デメリット①日本全て地産地消で賄えるわけではない
言わずもがなですが、北海道~沖縄までの全ての地域が地産地消だけで賄えるわけではありません。
雪国では冬の季節は栽培できる作物がほぼないので、他の温暖な地域から農作物を買わないと生きてはいけないですよね。
なにより適地適作が農業の基本なので、より品質のいい野菜をたくさん栽培することを考えれば、一つの地域で全ての作物を栽培することは効率的ではありません。
デメリット②高い評価をしてくれる所へ売れない
その地域だけに売り先を限定してしまうと、より高い評価をしてくれる相手に野菜を売れないというデメリットもあります。
つまり、高い価格で買ってくれる所へ売れないということです。
都市近郊の農業であれば、高く買ってくれる消費者が多くいますが、田舎では農家も野菜もたくさんありますから、価格も上げにくいのが現状です。
「つまり金か!メリットを犠牲にしてまで金が欲しいのか!」
と誰かに言われたら、こう返します。
「はい、稼ぎたいです!農業で継続的に利益を出して生活していくには金なしでは考えられません。」
高度成長期に作られた、広域の流通システムや農作物の規格、産地リレー(季節によって作物の産地を変えること)など、大都市への輸送が簡単になった恩恵を活かさない手はないと思うんですよね。
高く買ってくれる=評価してくれる、なので、遠い距離でも顔が見えずとも私は嬉しいですよ。
デメリット③地域を盛り上げたいから地産地消?
農水省のHPには、地産地消のメリットとして、地域の活性化につながると書いてありますが……
たしかに地元産の野菜や加工品が売られていたら、応援の気持ちで買いたくなりますし、地域にお金が落とせるから活性化につながるというのは一理ありますが、
農業で地域を盛り上げるには地産地消しかない、わけではありません。
- 地域で農業をして、
- 地域の方をパートとして雇って、
- 地域に税金を納めているので、
JA出荷でも観光農園でもどんな出荷先でも、農業で地域に貢献していることに変わりないわけですから。
私にも地域愛がないわけではないですし、私の地域も盛り上がってほしいのは山々ですが、
販売先まで口を出されると、自由度が高いという農業を続けられている理由まで干渉されてるようでなんか嫌です。
ナス男の販売戦略
私も近くの産直で野菜を売って名前を知ってもらいたい、そんな時期がオレにもありました。(範馬〇牙風)
ただ、産直のデメリットも肌で感じて自分には産直が向いていないと分かり、今はJA一本になっています。
詳しく書くと長くなってしまうので、こちらの記事も読んでください。
10年以上は農業の荒波に揉まれて試行錯誤してきて、令和6年現在ではJA出荷100%です。
農家のJA離れが進んでいる理由について | 農業生き残りブログ (otikoborenouka.com)
ちなみに、私のナスはJAを通して近場のスーパーにも売られているので、JA出荷だとしても完全に地産地消をしていないわけではないです。
地産地消を否定するつもりも毛頭ございません。
あまりにもSDGsという言葉が独り歩きして、「地産地消は正義、輸送コストは悪」みたいになってほしくはないと思っています。
地産地消をもう一歩外から見て、「国産国消」という概念で、消費者の方には判断していただきたいです。
まとめ
今回は、
「地産地消のメリットデメリット。私は地元で野菜を売らない理由。」
について書きました。
皆さんの地産地消に関する意見もぜひ教えてください!
この記事が少しでも参考になれば嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。