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規格外はもったいない!?誤解されやすい野菜の出荷規格の話!

農業について
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今回は

規格外はもったいない!?消費者の方にも知ってほしい野菜の出荷規格の話

というテーマで記事を書きます。

規格外と聞くと、

「規格外を捨てるくらいならタダで配れよ!」

「もったいないだろ!困っている人もいるんだぞ!」

という意見が必ずありますが…

座り込みのイラスト

農家には農家の事情があって、規格外にも必要性があります。

農業に興味がある方や消費者の方にも読んでほしい内容です!

記事の内容

規格外とは?

規格外の必要性5つ

規格外をあえて栽培する農家

規格外とは?

そもそも規格外とはどういうものかをざっくりと説明すると、

JAや市場などに出荷する際の規格から外れたものを指します。

  • 見た目や傷
  • 虫食いや病気
  • サイズ

これらの項目の規格によって選別されますが、この規格内に収まらないのが規格外品です。

例えばナスの場合。

ナメクジ(害虫)の食害はもちろんダメです。

曲がりすぎているナスも規格外になります。

あとはラグビーボール(空洞果)は出荷できません!

こんな感じで、毎回規格外は出てしまいます。

どんな作物でも、必ず規格外は一定数出てしまう

そして大前提として、ナスに限らず、どんな作物でも必ず一定数規格外は出てしまうんです。

  • 病害虫の被害
  • 天候の関係
  • 植物生理

これらの条件により、どんなに栽培が上手な農家さんでもどんな作物でも必ず一定数規格外は出てしまいます。

「それでも食べられそうじゃないか!加工して安く売れよ!」

と聞こえてきそうですが、ちょっと待ってください!

ここからは、なぜ規格が必要なのかを僕の考えを交えながら説明します。

規格は何のためにあるのか、誰のためにあるのか。

僕の考えは、規格は「農家を守るため」に存在すると考えています。

規格の必要性①クレームから農家を守る

規格の必要性の一つ目は、クレームに対しての基準になっているからです。

先ほど挙げたナスの規格外をバンバン出荷してしまうと、必ずクレームの対象になります!

厳しいくらいに規格を守らないと、流通の過程でダメになってしまったり、見た目で消費者に敬遠されてしまって売り残ってしまうからです。

個人のSNSなどでも簡単に口コミが広まる現在。

中小農家なら、クレーム一つで大ダメージになることもあり得ます!

風評被害を受けた農家のイラスト

こういうリスクを避けるためにも、規格を守って出荷しないといけません。

規格の必要性②産地のイメージを守るため

二つ目は、産地のイメージを守るためです。

品質が悪い野菜を買ってしまった消費者の方は、やっぱりその産地のイメージは悪くなってしまいます。

産地間のシェア争いも激しいので、一人でも一つでも規格を守らなかったら、産地全体のイメージを下げてしまいます。

先にも言った通り、SNSなどで口コミが簡単に広まってしまう現代では、産地のイメージダウンはかなりのダメージになります。

先日、ツイッターでみかん農家さんの廃棄についてのツイートで素晴らしいと思ったツイートがあります。

それがこちら。

これこそプロ農家の矜持だと思いました!

こんなこだわりのつまったみかんを食べたいと思った方!

さかたのみかん様のHPを載せておきますので、ぜひアクセスしてみてください!

規格の必要性③栽培管理の目安になる

3つ目として、規格外の発生状況を観察することで、栽培管理の目安にすることもできます。

例えばナスの空洞果は、樹勢が弱い時の花芽の時に出やすいです。

つまり空洞果がたくさん出ているハウスの場合、樹勢が弱いと判断でき、

樹勢を強くするような管理に変えていくサインにもなります。

先に書いた通り、管理を徹底したとしてもどうしても一定数出てしまいますが、それでも規格外の数を減らすことは可能です。

規格外を捨てないということより、そもそも規格外を減らしてなるべくゼロに近づけるということを農家は目指すべきだと考えます。

規格の必要性④供給過剰→価格下落から農家を守る

4つ目は、価格下落から農家を守るためです。

野菜の価格は、需要と供給のバランスで決まってきます。

需要より供給が多ければ多いほど、野菜を溢れ価格は下がってしまいます。

規格外が多く出回ってしまうと、正規の野菜は規格外に引っ張られるように当然価格が下がってしまいます。

「悪貨は良貨を駆逐する」

の言葉通りに規格外に引っ張られるように価格が下がってしまうんです。

マジメに栽培して正規品を多く出している農家さんほど、損をしてしまうことは避けなければなりません!

規格の必要性⑤土に還して畑の栄養分にする

5つ目は、畑に規格外を捨てることで畑の栄養分にできるということです。(ここでいう栄養分というのは、肥料要素ではなく「有機物、つまり微生物の餌」の意味です。)

あまりに野菜の価格が安いと、農家としては出荷するだけでマイナスになるという状況もあります!

人件費や出荷手数料、運賃などかかりますからね。

こういう状況なら、出荷せずにそのまま畑にすきこんでしまうというのも選択肢の一つです。(連作障害が強く出る作物は、圃場の外に持ち出し他方がいいですが。)

規格外は良質な有機物であり、そのまま畑に入れれば微生物の餌にもなりますし、畑の栄養分にもなります。

もったいないように見えますが、全くのムダではありません。

農家はタネを蒔く前に売り先を決めている

「規格が農家にとって必要なのは分かったよ!だけど、捨てると赤字になるだろ!?」

「売り先を見つけたり、もっと工夫できることがあるんじゃないの!?」

確かに出荷せずに捨てるというリスクを避けるために売り先を工夫することも、農家の経営判断では重要です。

ただ知っておいてもらいたいのは、農家はタネを蒔く前から売り先を決めて栽培に取り組んでいるということです。

花の種を植える人のイラスト(男の子)

「この野菜は〇月に全量JAに出荷する」

とか、

「順次収穫して直販で売り切る!」

という具合に、うまく栽培できるという前提で出荷予定を組んでいるんです。

前もって予定しておかないと、安定出荷できずに出荷先も困りますしね。

安定出荷の重要性についての記事はこちらから。

加工工場などに慌てて出荷しようとしても、

  • 工場のキャパが追いつかなかったり、
  • そもそも出荷するのにも手数料や人件費、運賃などかかったり

価格暴落が起きてしまったシーズンでは、慌てて緊急の売り先を探してもいい取引にならないことが多いです。

握手をしているビジネスマンのイラスト「男性と女性」

しかし、ここで勘違いしてほしくないのは、

価格暴落で経営の危機に瀕している農家さんや、農家さんからのSOSをつないでいる企業を批判しているというわけではないということ!

むしろ、経営の危機を乗り越えてほしいと同じ農家として思っています。

長くなってしまうので、詳しくはこちらの記事で。

出荷規格は変えられる!けど…

「規格を守る重要性は分かるんだけど…JAは規格は厳しいし変えられないじゃないか!」

と思われている方もいるかもしれませんが、

JAや市場の出荷規格は変えられます。

変えられるんですが、

  1. 部会内でもいろいろな意見の人がいる
  2. 自分たちの都合のいいように規格を変えると、取引先に嫌がられる
  3. コロコロ規格を変えると、取引先が対応できなかったり、他産地にシェアを奪われたりする

これらの理由から、出荷規格は変えられるけど変えにくいというのが現状です。

何年も先を見据えた出荷規格の交渉や、取引先との信頼の構築が大事で、簡単にまとまる話ではありません。

どうしても規格に納得できない人は、JAや団体から抜けて、独自に販売を始めるというのが多いと思います。

始めから規格外を売る目的ならオッケー!

ちなみに、始めから出荷規格にこだわらずに栽培する農家さんもいます!

どういう農家さんかというと、

  • 規格不選別で取引するから、見た目にはこだわらない。
  • 始めから加工品や業務用に出荷する目的なので、見た目や規格より他にこだわる!
  • (そうは言っても、売り物にならないものは捨てたり最低限の選別はしている)

という農家さんです!

価格暴落で余ったから慌てて業務用に…だと業者も対応できませんが、

始めから規格外を作って売り先も決まっているのであれば、全然オッケーでしょう!

栽培戦略が一貫していて素晴らしいと思いますし、こういう農家さんは毎年利益を出し続けています。

まとめ:規格は必要!規格外も意味がある。

今回は

「規格外はもったいない!?消費者の方にも知ってほしい出荷規格の話」

というテーマで書きました。

まとめるとこんな感じ。

どんな作物でも、どうしても規格外は出てしまう。

規格外にも必要性がある。

規格にこだわらずに栽培している農家さんもいる。

価格暴落が起きるたびに、規格外の捨てられた野菜がニュースになりますが…

農家にもリスクがあるので、タダでは野菜はあげられません!

この辺の話も声を大にして言いたいんですが…長くなってしまうのでこちらの記事で。

農家にも事情があるということを消費者の方にも知ってもらいたいです。

また、規格にこだわらずに売り先を確保している農家さんもいますので、これから農業を始めようと考えている方は視野を広げてほしいなと思います。

僕もなるべくいいナスを栽培できるように、これからも努力しナス🍆

最後まで読んでいただきありがとうございました。