「儲かる作物はなんですか!?」「今後有望そうな作型ってありますか!?」
農業に興味のある方なら誰しも頭に浮かぶ質問ですし、農家も誰しも一度は聞かれたことのあるセリフでしょう。
そしてその答えは……
「そんな作物作型などない!」以上!
自分の地域や価値観、農業経営に合った作物は自分で考えて探すしかない!のが結論なのですが、
こういう作物選びをすると自分が納得できて経営しやすくなるよ、というポイントあります。
ということで今回は、
「農業で飯を食うために重要な作物作型選び、そのポイント7選を紹介します。」
というテーマで、農家の僕ナス男の経験などを基に紹介します!
ポイント①作物の相場を追うな!
一つ目は、過去に良かった作物の相場を追って栽培するな!です。
「去年ブロッコリーが高かったから、今年はブロッコリーを作付けするぞ!」
「〇月はキャベツの価格がいい年が続いているから、キャベツ栽培してみるか!」
という感じで、相場が良かった作物を後追いで栽培する農家もいます。

それで相場が当たる年もあるのですが、同じことを考える農家が多いので作付面積や供給量が増え、その結果前年のようにいい価格にはなりにくいということはよくあります。
儲かるネタはどの農家も探していますし、流行を追って作付が増えれば過去と同じ高値がつくのが難しいのは、どの作物にも共通しています。
詳しくはこちらの記事で。
過去のいい時の相場だけを狙うような作付計画は、危険です。

特に新しく就農される方は、価格低迷に耐えられる余力も少ないでしょうから、このような作物や作付計画は避けた方がいいでしょう。
ポイント②統計や平均を信じるな!
2つ目のポイントは、統計や平均を完全には信じるな!です。
ネットや地域の農業の窓口に行ったりして作物の情報を探すと、必ず下のような統計や平均のデータに当たります。
品目 | 農業粗収益 | 農業経営費 | 所得 |
だいこん | 315 | 175 | 140 |
さといも | 412 | 151 | 261 |
キャベツ | 392 | 210 | 182 |
白菜 | 321 | 197 | 124 |
ほうれん草 | 342 | 160 | 182 |
平成19年度品目別経営統計から抜粋
品目 | 農業粗収益 | 農業経営費 | 所得 |
大玉トマト | 2595 | 1369 | 1226 |
ミニトマト | 4071 | 2043 | 2028 |
なす | 3514 | 1820 | 1694 |
ししとう | 3759 | 2296 | 1463 |
いちご | 3596 | 1698 | 1898 |
もしくは、その作物の地域の平均の反収や利益などのデータでしょうか。
これらの数字だけを鵜呑みにして、作物を選んではダメです!
- ①表やデータの年度が古いと参考にならない
- ②別の産地では参考にならない
- ③儲かる作物が自分に合うかは分からない
- ④将来も儲かる作物かは誰にも分からない
- ⑤平均反収がいいから儲かる作物とは限らない
だから、統計や平均は参考程度に留めるべきです。
詳しくはこちらの記事で。
ポイント③現場の農家の意見を聞け!
ポイント3つ目は、その地域の農家の意見を聞け!です。
ネットなどの情報と実際の現場の農家では、その作物に対する印象のズレがけっこうあります。
そのような加工されていない生の意見こそ、参考にすべきです。

特に、その作物で収量トップレベルの先進農家やしっかりと利益を出している農家のところに行くべきですね。
無論、その作物で生計を立てる術をたくさん持っているからです。
栽培に悩んだら?人に聞け!仲間の視察に行け! | 就農生き残りブログ (otikoborenouka.com)
ポイント④まずは小さく栽培して試せ!
ポイントの4つめは、まずは小さく栽培して試せ!です。
ある作物が地域にも合っていて、利益が出やすいという仮説が立てられたとしても、
自分に向いているのかは、栽培してみないと分からないことがめっちゃ多いです。
だから、まずは自分でお試しで栽培してみることをおすすめします。
ただし(多品目栽培を目指す場合は別ですが、)いざこの作物をやると決めた時には、小さな作付面積のまま利益が出るわけではありません。
それなりの設備投資をして、ある程度の面積をこなさないと、利益は出にくいです。
そしてその作物でやっていく覚悟が決まったら、その時にまとまった機械設備投資をしましょう。
起業したい人へ!農業はおススメできない理由 | 就農生き残りブログ (otikoborenouka.com)
ポイント⑤色々な作物の農家の所で働け!
5つ目のコツは、色々な農家の話を聞きに行け!です。
やっぱり選択肢の有効性を強化するためには、その作物で飯を食っている農家の話を聞くことはとても参考になります。
前に紹介した通り、ネットなどの情報と実際の現場は、違うことも多いですしね。
そしてもしできることなら、そこでしばらく働かせてもらうのもおススメです。

- 作業のキツさ
- 圃場の環境
- 自分に作業が合っているか
など、データや話を聞くだけでは分からない色々なことを、肌で感じることができるからです。
百閒は一見にしかず、百見は1行動にしかずです!
僕も露地野菜から施設栽培のナスに作物転換する時に、実際に色々な作物の農家の所に行って、働かせてもらいました。
詳しくはこちらの記事で。
ポイント⑥失敗しながら自分に合った作物を選べ!
6つ目は、失敗しながら自分に合った作物を選べ!です。
作物選びは重要で、最初に選ぶ作物作型は今後の農業生活を占うものになりますが……
とはいえ、「最初に選んだ作物が天職!」という方もほとんどいないと思います。
篤農家と呼ばれる方のほとんどは、失敗を重ねながら試行錯誤を繰り返して今の作物作型にいきついているはず。
作物選びで失敗してもいいんです。むしろ、失敗は成功の母です!
作物の知識や経験値は必ず今後の農業に活きてくるので、過度に作物選びの失敗を怖がり過ぎるのも良くないと思います。
偉そうにブログで解説している僕も、今でこそ施設栽培のナス1本でやっていますが、過去には僕もあれこれ手を出しては失敗していました。
具体的な作物の遍歴はこちら。
僕が就農した当初栽培していた作物:米、スイカ、枝豆、キャベツ、白菜、ブロッコリー、カリフラワー、切り干し大根
↓
10年経った今栽培している作物は、
施設ナス一本
かなりの作物に手を出しては失敗し、今のナス栽培のスタイルにいきついています。
就農~農業経営を軌道に乗せる栽培戦略!作物を絞るメリットデメリット! | 就農生き残りブログ (otikoborenouka.com)
ポイント⑦選んだ作物作型を深めつつ、状況によっては柔軟に作物転換せよ
7つ目は、選んだ作物作型の栽培を深めつつも、状況によっては柔軟に作物転換せよ!です。
「簡単に作物を変えるなと言っていただろ!」
と言われるかもしれませんが、ポイント①とは意味合いが少し違います。
最初に選んだ作物だから……と固執しすぎると、かえって損をすることもあるかもしれません、ということです。
そのくらい今の農業情勢はあまりにも厳しく、災害も甚大化し、そして全国の作物作付状況が目まぐるしいスピードで変わっています。
自分に合った作物作型をある程度続けた方が、栽培技術も深まるし、価格もそれなりについてくるとは思いますが……
それだけでなく、常に状況を見ていざという時の作物転換の可能性も頭の隅に残しておくべきだと思います。
僕は露地野菜農家から、施設栽培ナス1本に作物転換しました。

新設ハウスにかなりの額を投資してしまった以上、あと10年はナスを栽培することになるでしょう。
しかし時代は残酷で、これからずっとナス1本でイケる保証なんかどこにもないです!
- 戦争や経済状況
- 感染症の拡大
- あらゆる経費の増加
- 数年先すらも読めない昨今
自分の作物作型にこだわりを持って深めていくことも大事ですが、常に柔軟に作物を変えられる思考や経営でいることも、同じくらい大事だなと感じます。
まとめ
今回の記事では、
「農業で飯を食うために重要な作物作型選び、そのポイント7選を紹介します。」
というテーマで書きました。
①作物の流行を追うな!
②統計や平均を信じるな!
③現場の農家の意見を聞け!
④まずは小さく栽培して試せ!
⑤色々な作物の農家の所で働け!
⑥失敗しながら自分に合った作物を選べ!
⑦選んだ作物作型を深めつつ、状況によっては柔軟に作物転換せよ
最後に断っておきますが、あくまでも僕の経験を基に出した意見なので、全ての方の最適解ではないです!
僕より長く利益をあげ続けている農家の意見は違うかもしれませんし、
6次産業化がいいと言う方もいれば、多品目栽培がいいと言う方も当然います。
農業で生計を立てるため、農業で生き残り続けるために。
僕だけでなく、色々な方の意見を参考にしてみてください。
その中で少しでもこの記事が参考になれば嬉しいです!
最後まで読んでいただきありがとうございました。