「農業はたくさん補助金が出ている!」
「補助金がもらえる今が、農業を始めるチャンス!?」
という声を聞きます。
確かに農業は様々な形で補助金が出ています。
補助金がうまく利用できれば、農業経営の助けになります。
ただし!
声を大にして、これだけは注意ほしいことがあります!
補助金を狙って、当てにして、農業計画を立ててはいけない!
今回の記事で、
- どんな種類の補助金があって、
- なぜ注意が必要なのか
実際に農業で生計を立てている私ナス男が解説します!
1、就農時の補助金
今現在、新規就農者に対してものすごく手厚い補助が出ています。
例えば農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)の補助金。
詳しくはこちらから。
条件を満たさなくてもらえなかった僕としては、羨ましい限りです!
ざっくり補助金の内容から、
「就農して2,3年は栽培技術や農業経営が安定しないだろうから、補助金を使って一人前の農家になってね!」
と政府の思惑が推測されます。
この思惑、狙いは間違っていません。
全くの新規就農の方は、土地も機械もない0からのスタートになります。
農業に必要な機械などを揃えるには、予想以上にお金が必要です!
サラリーマンの方は実感がわかないかもしれませんが、
経費として使う100万は、あっという間に消えてなくなります!
新規就農の方にとっては、現金はどれだけあっても足りなく感じると思います。
なので、もらえる補助金はもらっておいた方がいいとは思いますが、
一方で注意も必要です。
途中で農業をギブアップしたら、返済義務がある。
補助金の財源が税金である以上、適切な使い方をしないといけませんので、
農業を途中で辞める人に対しては補助金は返還義務があります。
ほとんどの方は、真剣に農業を志して覚悟を持っていると思いますが、
補助金目当てで軽い気持ちで農業を始めようとする人がいるのも事実です。
「150万ももらえるの!?それだけもらえれば絶対農業なんて余裕じゃん!」
という感じで…
心の中では農業を軽く見ている人には補助金は使ってほしくないのが納税者の感情です。
まあ、そんな人は論外ですが…
就農時の補助金の内容は厳しくなるかも
また、補助金の内容は今後もますます厳しくなっていくことも考えられます。
景気や生活が良くなっている実感がない今、税金に対して世間の目が厳しくなっているので、
就農時の補助金に関しては、内容の厳格化は覚悟しておくべきでしょう。
2、機械設備の購入補助
新しく機械設備を導入する方に対して、価格の一部を補填する形で補助金が出ることもあります。
農業の機械設備は本当に高いんです!
トラクターは数百万、ハウスは数千万…
とにかく機械設備投資が農業経営のボトルネックになっています。
詳しくはこちらの記事で。
ただやっぱり、農業を効率化して利益を上げていこうとするなら高額な機械は必要になってくるので、購入補助が出るのはありがたいことではあるんですが…
このタイプの補助金もメリットばかりではありません。
思わぬ落とし穴が潜んでいます。
ほしいタイミングで買えない
補助金を使って機械設備を導入しようとすると、その機械設備を使いたいタイミングで購入することは難しいでしょう。
原因としては、補助金申請の書類の関係や、業者に仕事がたてこんで納入が間に合わないなどです。
どうしても書類の審査やスケジュールがあったり、業者も一気に発注が来るので仕事が遅れたりしてしまうんですよね。
もし機械設備の納入が遅れた場合…
例えば春~秋に畑を耕すのにトラクターを買いたいとしても、実際に使えるのは
もしかしたら機械の出番がないシーズンオフになることもあり得ます。
その年のシーズンから使いたかったのに…一年分損した気持ちになりますよね…
購入補助の申請が採択されない場合がある
財源が税金である以上、補助金には予算があり、申請するには条件をクリアしていないといけません。
そして、申請を出した全員が採択されるわけもなく、その中から採択されるのは一部に限られる場合がほとんどです。
補助金を当てにして、前倒しで機械を購入できたとしても、
採択されなければ、新品の高額な機械を値引きなしで買うことになってしまいます。
(多くの場合、値引きなしのメーカー希望価格で買うことになります!)
JAやメーカーでも、年に何度かは型落ちや展示品などで割引が聞くようなセールがありますので、そのタイミングで買った方が総合的に見ればお得かもしれません。
購入補助の補助金を使う場合は、
納入が遅れる場合と補助金が出ない場合、
この2つの悪いケースを考慮したうえで申請を出さないといけません。
コロナ時の補助金
コロナショックを受けた2020年、ダメージを受けた農家を助けるという名目で、
「高収益作物時期作支援交付金」という補助金に予算が出ました。
コロナショックで外食需要が激減して肉や野菜の需要も減り、価格暴落し売れ残りも多く出ました。
農業を続けられなくなるような致命的なダメージを受けた農家も多く、
政府は営農を継続してほしいという思惑があったのだろうと思います。
しかしこの補助金は制度的にも甘く、予算の枠にも相当無理がありました。
確実に予算オーバーになるでしょ…
と、農家なら少し考えたらすぐに想像できることなのですが…
結局スケジュールはかなり遅れ、予算の都合で制度設定がかなり厳しく変更になりました。
その詳しい記事はこちらから。
確かに高収益作物の補助金の要綱には
「制度が変更になることもある」
と文言があるのですが…
営農を諦めきれない農家さんは振り回された挙句、補助金もわずかしかもらえないとなると、神的なショックは相当なものでしょう。
未曽有の事態ではありましたが、政治家は現場の声を拾い、本当に必要な補助を考えないと!
農家や行政の職員を振り回すだけの、ただのばらまきになってしまうので、
もう少し配慮してほしかったです。
まとめ:「補助金漬け」になるな!補助金申請は良く考えて
いかがでしたか?
今回は
「補助金は当てにするな!」
というテーマでお話しました。
代表的な補助金について解説しましたが、まだ地方自治体によっては紹介できていない補助金もあるので、調べていただきたいです。
最後に一つ断っておきたいのは、
「補助金を使うな!補助金に一切頼るな!」
とは僕は思ってないということです。
むしろ、使える補助金なら使った方がいいという意見です。
ただし、自分の農業経営を曲げてまで補助金を申請する必要はないということなんです。
- 補助金に対する書類の手間であったり、
- 思い通りのタイミングで使えなかったり、
- 精神的な負担もあったり、
むしろ損なんじゃないかというケースもあるんです。
本当にその補助金は必要あるのかをよく考えて申請を出し、
「もらえたらラッキー!」
くらいに考えてないといけません。
補助金に頼ってしまうと、補助金なしでは機械設備買うのをためらうようになり、挙句の果てには補助金なしでは農業経営が立ちいかなくなる農家もいます。
いわゆる「補助金漬け」の状態…
経営状態は全く健全ではなく、この状態は絶対に避けなければいけません!
補助金は農業経営において、あくまでも「補助」であるべきです。
確実に地力をつけて、毎年確実に利益を上げ続けられる農業ができるように。
僕も常に考えていかなくては!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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