農業を始めたいけど、同じように新規就農した人のデータが知りたい!
農業経営の傾向が知りたい!
そんな方にうってつけの調査がウェブに公開されています。
ということで今回は、
「農業を始めるなら、知っておいて損はない新規就農者の最新の傾向」
というテーマで、農家の僕ナス男が紹介します。
これから就農する方や、農業に興味のある方はぜひ読んでください。
農業をはじめる.JP
今回の記事で僕が紹介するサイトは「農業を始める.JP」の令和三年度新規就農者の就農実態調査です。
このアンケートは、
- 就農してから概ね 10 年以内の非農家の新規就農者を対象として、
- 就農の経緯や経営概況、
- 農業経営の展開方向
- 今後の新規就農者の取り組み
- 新規就農支援における課題
を調査することを目的にしています。
令和3年度で新規就農者約2000人もの回答を得てまとめているので、かなり農業経営の現場に則したリアルなデータになっていると思います。
僕は統計や平均は当てにしてはいけないという立場の記事も書いていますが、
最新の生のデータを知っておくことは、これから就農を目指す方にとって損はないはずです。
この記事では、特に僕が気になった項目を5つ挙げて紹介します。
1,就農時に苦労したこと
就農時に苦労したこととして、
- 「農地の確保72,8%」
- 「資金の確保68,6%」
- 「営農技術の習得57,7%」
が他の項目よりも割合が高く出ています。
今後の経営面と生活面の課題という項目でも、資金の不足と技術の不足と回答した方は多いです。
やはり、農地と資金、栽培技術が農業経営の肝になっているということですね。
逆に言えば、この3つさえあれば農業はなんとかなるとも言えてしまうような感じです。
2,就農1年目の費用と自己資金
新規就農1年目の費用の平均は755万円で、自己資金の平均は288万円です。
費用合計 | 自己資金 | 費用-自己資金 | |
集計対象全体 | 775万 | 281万 | -474万 |
1,2年目 | 830万 | 291万 | -540万 |
その差額は-474万円で、自己資金だけでは一年目は赤字になるという傾向が見て取れます。
一年目の販売金額第1位の作物別に見ても、自己資金だけでまかなえていない傾向があります。
そして下の票は、販売金額第1位の作物別の費用と自己資金の平均です。
酪農 | 3903万 | 581万 | -3322万 |
その他畜産 | 1341万 | 270万 | -1044万 |
施設野菜 | 1136万 | 312万 | -815万 |
露地野菜 | 431万 | 238万 | -193万 |
果樹 | 419万 | 247万 | -171万 |
酪農や畜産、施設野菜は特に費用が多くかかり、一年目には1000万円以上の費用がかかっています。
足りない部分は、当然借り入れななどで埋め合わせになります。
資金調達は、
- 青年等就農資金が1位
- 経営体育成強化資金が2位
- スーパーL資金が3位
の順で利用されています。
特に青年等就農資金は、就農前に作っているであろう営農計画書が活かせる新規就農者が使いやすい資金ですので、一番に検討したいところです。
3,年間農業従事日数
農業をしている日、働いている日が年間に何日あるかの統計です。
1年目に250日以上働いている方は71,3%、5年目以上では82,4%です。
1日~29日 | 30日~59日 | 60日~99日 | 100日~149日 | 150日~199日 | 200日~249日 | 250日~ | |
全体 | 0.3 | 0.3 | 0.4 | 2 | 5.1 | 13.8 | 77.9 |
1,2年目 | 0.4 | 0.6 | 0.4 | 3.3 | 5.7 | 18.2 | 71.3 |
農業はやり方次第で自由に休める、休みは自分で決められるとはいえ、約8割はサラリーマン以上に働いています。
休みが少なくても農業がやりたいと思える方でないと、なかなか続かないかもしれません。
4,現在の農業所得階層別構成と農業所得
みんなが大好き、農業所得のお話です。
農業所得=農産物売上-経費
と考えていいので、サラリーマンの年収に当たります。
0円未満 | 0円 | 50万未満 | 100万未満 | 100万~300万 | 300万~500万 | 500万~1000万 | 1000万以上 | |
全体 | 9.2 | 15.6 | 11 | 11.3 | 31 | 11.3 | 7.6 | 2.9 |
1,2年目 | 13.2 | 29.8 | 15.3 | 14.7 | 18.7 | 2.9 | 3.6 | 1.7 |
農業所得が300万円未満の割合は新規就農者全体では78.1%です。
新規就農して1,2年目は、さらにその割合が増えて、91.8%となります。
サラリーマンの年収の平均が400万だとすると、やはり農業は残念ながら一般企業に比べて儲からない産業だとなります。
そして下の表は、販売金額第1位の作物別の年間所得です。
0円未満 | 0円 | 50万未満 | 100万未満 | 100万~300万 | 300万~500万 | 500万~1000万 | 1000万以上 | |
酪農 | 3.1 | 9.4 | 9.4 | 6.3 | 9.4 | 3.1 | 15.6 | 43.8 |
その他畜産 | 9.3 | 20.9 | 14 | 11.6 | 9.3 | 16.3 | 9.3 | 9.3 |
施設野菜 | 11.1 | 11.8 | 7.9 | 9.4 | 31.2 | 16.1 | 10.5 | 1.9 |
露地野菜 | 9.2 | 17.5 | 12 | 12.5 | 33.1 | 9.3 | 5 | 1.3 |
果樹 | 6.6 | 17.9 | 12.5 | 12.5 | 32.2 | 8.1 | 7.7 | 2.6 |
①酪農②その他畜産③施設野菜、の順で農業所得が高いです。
酪農に関しては、1000万円以上が43.8%も!(地域差は大きいのかもしれませんが。)
しかし上位3つは費用も高いので、そのあたりのリスクをどうとらえるのかは人それぞれ、といったところでしょうか。
居抜き物件や中古の購入などで設備投資を抑えることが出来るのならば、難易度は大きく下がるということですね。
まとめ
今回は、
「農業を始めるなら、知っておいて損はない新規就農者の最新の傾向」
というテーマで書きました。
「農業はサラリーマンより働いているのに、サラリーマンより儲からない」
というのが、残念ながら統計から読み取れる推察になります。
令和3年度の新しい調査で、2000名以上の新規就農者が回答しているので、生々しいリアルな数字という印象を受けます。
しかし、
「統計が自分に当てはまるわけではない、やり方次第で農業は稼げる!」というのも確かに当てはまります。
1000万以上の農業所得を稼いでいる新規就農者も数パーセントですが存在していますからね!
なかなか厳しい農業経営は厳しいものになるかもしれませんが、夢がありますね!
僕もまだまだですが、この記事を書いていて改めて頑張ろうと思いました。
以上参考になれば嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。