就農に関する本や個人の情報発信の中には、故意ではないにせよ?、甘い言葉や表現が並んでいるものがあります。
ちゃんと利益を出す農業は出来なくはないですが、上にあげた3つのような言葉を全て当てはまるような農業は、僕が知る限りではありません。
農業に関する甘い表現には注意!
ということで今回は、
「農業に関する甘い言葉には裏がある!?「誰でも」「簡単に」「稼げる」農業はない!」
というテーマで、もがき苦しみながら農業をしている僕ナス男が紹介します。
これから就農する方や、農業に興味のある方はぜひ読んでください!
農業に関する甘い表現には注意!
まず前提として、農業という産業は他の産業に比べても簡単には稼げません。
農水省の令和2年の営農類型別の農業経営収支を見ると、全農業経営体の農業所得(売上-経費)は、123,3万円です。
主業経営体(農業を主業としている農家)の平均を見ると、415,4万円ですが……
サラリーマン一個人の平均年収(約436万)と比べても、差がありますよね。
もちろんこれは平均であり、着実に利益を出している農家や、稼げている農家もいるのは事実ではありますが……
故意ではないかもしれませんが、農業を知らない方が読めば誤解してしまうような表現を使っている本や個人の発信があります。
農家であればすぐに要注意だと感じる言葉を、この記事を読んでくれている方にも感じ取ってほしい!
今回は、代表的な注意すべき表現を4つ紹介します。
①売上と利益を混同させている?
まず一つ目は、売上と利益を混同させている表現です。
「1000万稼げる農業!」
「月に○○万稼げる農業!」
という表現に、「すげえ、儲かるじゃん!」とすぐに飛びつくのはやめてくださいね。
まずはその数字が売上なのか利益なのかと疑問を持たなくてはいけません!
農業の売上から経費を引いたものが利益(売上-経費=利益)なので、売上と利益では大きく意味が異なります!
例えば売上から経費を引いて、利益が1000万円残っているのであれば、それはもう素晴らしいと思います!
ぜひ参考にすべきですし、僕も話を聞きに行きたいです。
しかしその1000万円が売上の話であれば……正直普通です。
売上(1000万円)-経費(仮に700万円)=利益(300万円)となるので、
むしろ売上1000万円ならば、就農1,2年目から目指すことができる現実的な数字でしょう。
売上や利益を混同させている表現は本当に多いので、もし有料コンテンツを買おうとしているのであれば、まずはその方に質問してみることをおススメします。
②働かなくても不労所得が得られる?
2つ目は、まるで農業で働かなくても不労所得を得られるというような表現です。
(もっともこれは、就農希望の読み手が拡大解釈して誤解していることが多そうですが)
「自分が畑に出て働かなくても、勝手にお金が生み出す!」
「手をかけずとも勝手に野菜が育つ!」
「週2,3日で稼げる!冬は遊び放題!」
このような胡散臭い投資話に出てきそうな内容は、農業にはまず当てはまりません。
もちろん、畑の労働以外に収入源のある農家はいます。
- 雇用したりして、栽培から販売までが仕組み化できていれば、自分が畑に出て働かなくてもお金は入ってきます。
- 農業本の出版やYouTubeなどをしている農家は、自分の時間労働とは性質の異なるお金が得られます。
- 雪が多い地域や作物によっては、農閑期が多く取れます。
あとは、農業とは全く別分野の、アフィリエイトなどの広告収入を得ている農家もいます。
別にこのような稼ぎ方を僕は全く否定しませんし、稼ぐ努力は素晴らしいと思います。
しかしこれらの農家は、不労所得とは形容できないほどの労働や努力をしているはずです。
- 雇用するのは、栽培技術と資金が要りますし、
- 本の出版が出来るほどの実力がある農家になるまで相当努力が要りますし、
- 農閑期で別の仕事をしている方もいますし、
- 広告収入は金額を得られるまでには知識と時間が要ります。
「誰でも、簡単に、努力すれば、」生計が立てられるというわけではありません。
農業は個人事業なので、人の働き方をとやかく言うつもりはありません。
しかし僕もブログなどをしていて感じることは、その分畑に出て働いた方がよりお金がはいるのではないかと個人的には思う時もあります。
なんにせよ不労所得を夢見るより、まずは汗水たらして農業の土台を作る方が先ですね。
③親元就農か新規就農か?
3つ目は、親元就農か新規就農かの前提がない表現です。
ここで親元就農と新規就農の優劣をつける意味合いはありませんが、
新規就農と親元就農では、1年目からの「土台」の差はやはりあります。
ここでいう「土台」とは、「農地、資金(機械設備)、栽培技術」のことです。
就農~わずか数年でここまで稼げるようになった!
新しい作物や事業も立ち上げて、売上を一気に伸ばした!
本や個人の発信で書かれているこのようなパターンは、(もちろん本人の凄まじい才能や努力もありますが、)
前提として親が農業をしていて、機械や農地、栽培技術が土台として揃っていた、ということかもしれません。
元々機械や農地があれば規模拡大は比較的簡単ですし、栽培技術がある労働力(親)も最初からあれば、栽培で失敗することは少ないですからね。
また親でなくても、例えば親戚のいい農地が借りられる伝手があるだけで、懸案事項はだいぶ減ります。
僕もじいさんばあさんの土地で農業をしているので、親元就農の部類です。
全くの新規就農だったら、ここまで失敗出来てこなかったと思いますので、やはりありがたみは感じます。
就農時の最大懸案事項であるこれらの土台(農地と資金(機械設備)と栽培技術)を完全な新規就農者は手に入れることが大変です。
新規就農者の方が、始めから土台がある方に憧れて目標にするのは、計画の段階で無理が生じることもあります。
急拡大している事例や簡単に稼げるようになったなどという個人の発信には、一旦冷静になって見てみるといいかもしれませんね。
④JAに出荷せず、個人で販路を作れば儲かる?
これもよくある内容ですが、JA出荷をやめて個人で販路を作れば稼げるという単純な話は実際の農業の現場ではありません。
「手数料高いし、価格も自分で決められない!」
「JAに売らずに個人で販路を作ることが、儲かる農業だ!」
本や個人の発信に多く書かれているこのような表現は本当に正しいでしょうか?
僕はJA出荷も選択肢として悪くないと思っています。
長くなってしまうので、詳しくはこちらの記事で。
確かにJA出荷で行き詰っている農家にとっては、個人の販路づくりは売上アップの政策1つにはなり得ます。
個人で販路を作って収穫した野菜を全て捌けて利益が上がった農家もいるでしょう。
ただ営業や輸送の時間と労力をお金で買えるのであれば、悪くない選択肢とも言えます。
JA出荷では稼げない地域や作物もあるのは事実ですが、最初からJA出荷の選択肢を外してしまうのは実にもったいないと思います。
JA出荷できるレベルの品質の野菜を作れるようになってから……というのも悪くないはずです。
本や個人の発信では、個人での取り組みをして成功している農家が多いので、一般的なJA出荷の農家にも話を聞いてみるのがいいでしょう。
まとめ:甘いワードには疑ってかかろう
今回は
「農業に関する甘い表現は裏がある!?誰でも、簡単に、稼げる農業はない!」
という内容で書きました。
「儲かってないお前が言うな!」「希望を持ってもいいだろ!」
と言われれば、
おっしゃる通りです。でしゃばってすいません!
ですが、「誰でも」「簡単に」「儲かる」農業があれば、とっくに農家の数は増えすぎで問題になっているはずです。
もちろん現実はそうなっていません。
結局、個人の状況や地域の環境を考慮して、自分で作物や販路などを考えて試行錯誤していくしか道はないです。
言葉や内容をそのまま鵜呑みにせずに、裏側を読むようにしましょう。
書かれていない、行間にある努力を読み取りましょう。
地に足つけた着実な農業には、甘い言葉は必要ありません。
最後まで読んでいただきありがとうございました。