農家の平均収入や作物の平均反収など、就農者が参考にするであろう資料には多くの「平均値」が使われています。
就農計画を立てる上で、また作物選びの参考にする上で、それらの平均は役に立つこともありますが…
平均だけを見て判断するのは注意が必要!
平均は農業の現場の全てを正確に表せる指標ではないのです。
ということで今回は、
「作物選びや就農の時の注意点。農業の〈平均〉を疑え!」
というテーマで、農家の僕ナス男が解説します!
これから就農する方や、農業に興味がある方はぜひ読んでください!
①農家の平均所得を疑え!
まずは、みんな大好きお金(農業所得)のお話です。
農家の平均年収は、他の産業と比べても低いというイメージはあると思いますが、実際はどうでしょうか。
令和3年度の新規就農者の就農実態に関する調査結果を見てみましょう。
この資料によれば、新規就農者の農業所得(販売金額-経費)の平均は、178,4万円です。
しかし就農者全員が200万円未満かというと、そうではありません。
300万円以上は11,3%、500万円以上は7,6%、そして1000万以上の農業所得がある方は2,9%と少ないながら存在します!
販売金額第一位の作物別(主要作物別)にみても、どの作物も利益が出ていない農家もいれば、頭一つ抜けて稼いでいる農家もいます。
全員が平均付近の178,4万円ならなかなか農業で夢を追うことは難しいと感じますが、
新しく農業を始めた方の中でも1000万円プレーヤーも少なからずいるなら、農業に夢を見てもいい気もしてきますよね!
②作物の平均反収を疑え
次は平均反収についてです。
農業所得の平均と同じで、平均反収も農家全てが平均値付近に分布しているわけではないということです。
例えばある作物の部会の反収が5tだとすると、部会の農家全員が5t付近の反収を上げているわけではないんです。
3tしか採れていない農家もいれば、7tを取って平均値から頭一つ抜けている農家もいるということ。
作物選びの時や就農計画を立てる時に反収の平均値から売上を計算するはずなので、平均反収は参考にしないといけないですが、
平均反収だけを見て、作物の収益性や可能性を判断するのはダメです!
平均反収を押し上げている先進農家
JAの生産部会の中でも、少ないかもしれませんが平均を押し上げている農家はいます。
自慢はしていないと思うので、資料だけを見ていては分からないかもしれません。
隠れ先進農家は会話の中での知識量や周りの評判などから見つけることができます。
実際新しく就農する方は平均反収以上を目指さないといけません。
なぜなら、新しく就農する方は他の農家と違って初期コストがかかっているはずだから。
長年農業をしていて借金が少ないであろう周りの農家の平均反収では黒字にならないこともありますからね。
平均では算出されない隠れた優良農家こそ、話を聞いたり研修に行くべきです。
平均反収より下の農家がダメな農業をしているとは限らない
新しく就農する方が目指すのは平均を上回る農家ですが、平均を下回る農家がダメかというと、決してそうではありません。
平均反収以下でも農業経営は健全な黒字、というケースも紹介します。
1,無借金で機械設備がすでにそれなりにある農家
施設ナスを例に挙げると、
- 最新の保温カーテン
- 炭酸ガス発生機
- 鉄骨の軒高ハウス
などのお金がかかる機械設備がなくとも、パイプハウスで栽培していれば、そこまで反収を上げなくても黒字になるケースもあります。
2,複合経営をしている農家
施設野菜と露地野菜、酪農などを組み合わせて複合経営をしている農家も反収は低く出ることがあります。
一つの作物の反収が低くとも、他で補える作物があるのであれば農業経営は健全、というケースです。
3,大規模農家
作物によっては大規模に栽培することで、反収が低い分を総出荷量でカバーする戦略もアリでしょう。
これらのケースはいきなり就農したての方が目指せる農業経営ではありませんが、平均反収以下でも成り立つ農業経営もあるということは知っておいて損はないでしょう。
③平均では反映されないものもある
統計に関する記事にも書きましたが、平均だけでは反映されないものもあります。
最新の技術や産地の情勢が主たるものです。
これらは数値では測れず、常に変化しています。
いい数字が出ていてもこの先危険な作物や、数字では有望ではない作物でも現場の肌感覚では可能性はあるという作物もあります。
数字だけにとらわれず、現場の肌感覚のようなものも重要なヒントにしないといけません。
まとめ
今回は、
「作物選びや就農の時の注意点。農業の〈平均〉を疑え!」
というテーマで書きました。
一つ一つの農家の経営状況は違うので、平均という括りでは判断できないことも多々あります。
平均を参考にしながらもう一歩踏み込んで考えてみることで、違った見え方になることもあります。
農業で利益を出すヒントが見つかるかもしれません。
以上、参考になれば嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。