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ナス狩りを企画して感じた、「野菜の収穫体験」という農業の収益モデル。

農業について
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先日7月下旬、地域の住民の方を呼んでナス狩りなる企画をしました。

そこから得たことや課題、収穫体験という収益モデルについて思案してみます。

ということで今回は、

「ナス狩りを企画して感じた、「収穫体験」という農業の収益モデル。」

というテーマに、農家の私ナス男が解説します。

ナス狩りの目的とメリット

タイトルにもあるように、今年度終わり(7月下旬)に、私はナス狩りを企画しました。

「いちご狩りとか子どもたちが喜ぶから、ナス狩りもあると面白そうだよね!」

という、パートさんとの何気ない会話がきっかけではありますが、メリットも目的もあるので、試す価値はあると。

以下が、ナス狩りを企画する目的とメリットです。

①地域住民の方の理解を深められるし、消費者の直の声を聞ける。

近隣住民の方の農業に対する理解は、あればあるに越したことはないです。

  • 農作業(農機や消毒など)を毛嫌いされにくくなるし、
  • 防犯にもつながるし、
  • 縁があれば将来働きに来てもらえるかもしれないし、

目には見えないこのメリットは、かなり重要です。

「女性社員の会話を盗み聞きする社内の事情通」の写真[モデル:大川竜弥 Lala]

②子どもの食育になる

農家でない子どもは、実際にどのようにナスや野菜が育つのか分からないんじゃないかと思うのです。

ちょうど夏休みのシーズンなので、夏休みの日記や宿題のネタになれば来る理由が増える気がします。

「大刀洗の落花生は大きくておいしかよ」の写真

③片付け前の収穫し切れなかったナスを採ってもらう

私はハウスのナス農家で、7月下旬まで栽培してから片付け&土壌消毒して、8月末~9月頭に来シーズン定植という作業体系です。

  • このスケジュールの都合で、まだナスが収穫できるとしても収穫を長引かせることはできず、
  • 主婦のパートさんも夏休みには来れないので、収穫する人手も足りず、

片付け前に残ってしまうナスが出てしまうのはもったいなく感じていました。(トマトとかキュウリの果菜類はどうしても最後は収穫し切れずに少なからず残ってしまいます。)

それならば、お客さんにハウスに来てナスを採ってもらおうというシンプルな思考!

それでも儲かると言えるほど利益が出るわけではありませんが、片付けの短期パートさんを数時間雇う分にはなるのではという算段です。

④農業経営の選択肢を広げる、経験値にする

収穫体験という収益モデルは知ってはいますが、やったことはありませんでした。

収穫体験の一番の特徴は、何といっても、収穫出荷せずともお客さんがわざわざ来てくれること!

「ブルーベリーの実」の写真

JA手数料が高すぎるとは思っていませんが、JA出荷100%の私としては、魅力的に感じます。

あとは、自分で値決めできるのも魅力ですね。

産直で売っていた時もありますが、野菜+体験を売る時の値決めはどのくらいに設定するのか。

興味があるなら、やればいいじゃん!失敗しても、経験値になるじゃん!

JA出荷はこれからも続けますが、自分の引き出しを増やすという意味でもやって損はないだろうという判断です。

ナス狩りをやってみてよかったこと

手前味噌でなんですが、ナス狩りに来ていただいた家族は、概ね満足していただけたようでした。

その中で、特に好評だったことや印象に残っていることを紹介します。

ナスの樹や農業の知識にびっくりしてもらえた

収穫の切り方だけ教えて収穫体験だけやって終わり、という風にはしたくなくて、ナスや農業の説明も最初にしました。

意外とこれが好評でした。

普段農業に関わりがない家族では、ビニールハウスに入ることや、ナスの樹が身長より高いことにもインパクトがあったようです。

「ナスはこのハウスの中に何本植わっているでしょうか?」

「一年間で、一本のナスの樹から何本のナスが収穫できるでしょうか?」

というように、クイズ形式で紹介したのも、子どもたちには楽しかったのだと思います。

食育に少しは貢献できたのかも?

採りたての野菜のおいしさは格別だと知ってもらえた

「ナスがとにかくうまい、採りたては少し甘く感じる!」

「ナスが苦手な子どもでも、自分で収穫したナスは食べている!」

「どんな料理にしてもおいしかった!」

など、ナスの味や品質には満足していただけました。

「野外でバーベキューを楽しむ」の写真

おいしい野菜を作ることは農家として当然と言えば当然なのですが、

直接消費者の方からおいしかったと言われると、やっぱり嬉しいものですね!

個人販売をしない理由と言う記事でも書いた通り、私は普通の農家と同じようにお客さんから距離がある農業をしていますが、

たまには直接意見をもらうことも大事だなと改めて感じました。

ナス狩りをして出た課題

概ね好評だった一方でやはり課題もいくつか出ました。

課題①ルール、マニュアル作り

これからもナス狩りを毎年やるのであれば、ルールやマニュアルも作っていかないといけないと感じました。

事前に考えて、パートさんの子どもで流れを練習させてもらったので、アドリブで対応することはほとんどありませんでしたが、

しゃべることや注意事項も、紙にしておいた方がいいですね。

転売や、ハウス内の情報流出も念のため気を配る必要がありますかね。

SNSにアップするのは今回はやめていただいたので、今回は心配はないと思いますが、

ある程度の宣伝の効果もあるので、ルールを設定した上でのSNSや口コミ戦略も次回は必要になると思いました。

「ログインパスワードを盗み見る男性」の写真[モデル:ゆうせい 大川竜弥]

あと、小さい子は収穫バサミって片手で使えないんですね…想像力が働かず、実際にやってもらってから気づきました。
来年やるなら、準備しないと…

課題②単価を上げる工夫

今回は1家族500円で設定しましたが、(いくらお金儲けではないとはいえ、)これでは安すぎました。

あとは、「取り放題にしても、500円分もナス要らないよ!食べきれない!」という声もありそうですね。

「1袋250円、2袋500円」の方が、より多くの参加者が集まるし、いただけるお金も多くなりそうな気がします。

課題③チラシをもっと分かりやすく

ドキュメントで簡単に作っただけなので、ものすごく事務的になってしまって楽しさが伝わってなかったなあと反省しました。

お母さま達に訴求するには、もっとイラストや写真を使って、ナス狩りという未知の体験をイメージしてもらえるようにしないとダメですね。

課題④軒先販売も考える?

私はJA出荷100%でやってますが、頼まれるのならば個人販売やハウスの軒先での販売も利益としては悪くないのかもしれません。

ナス狩りの好評な口コミは、宣伝の効果も期待できるはずなので、軒先販売ならアリなのかもしれません。

「封に入ったにんじん」の写真

課題⑤低価格でどこまでこだわるのか

終始悩んだことはこれです。

果物ならその場で食べられるけど、ナスとかの野菜はその場では食べないですから荷物になっちゃうことを想定しないといけません。

1500~2000円を設定できるいちご狩りやブドウ狩りとはわけが違う。単価が上げにくいナス狩りで、どこまで楽しめるようにこだわれるのか。

あくまでも片付け前の捨てる中でのいいナスを探して採ってもらうだけなので。

あんまり時間とお金をかけすぎても、自分が苦しくなっちゃいますし、安売りするのはやらない方がマシですし……

チラシやマニュアルなどは形にしたら次回も使いまわせるのでいいんですけど、いちご狩りやそれこそ遊園地などのアトラクションと楽しさを比べられてしまうと困ってしまうなと。

食育や子どもの夏休みの日記の1ページになるということを強調していく路線でいく方がいいのかも?

野菜の収穫体験という収益モデル

大多数の野菜栽培農家が、作物を栽培して市場やJA、個人に出荷するスタイルですし、消費者の方も農業に対してはそういうイメージを真っ先に思い浮かべると思います。

私なりに収穫体験という収益モデルを分析すると、

  • 専作ではなく、多品目を作らないと満足してもらえない
  • 出荷経費はかからないけど、収穫体験のための経費(チラシ、ハサミなど)はかかる
  • 大人数をしっかり教えられないと、畑がぐちゃぐちゃになる

など、別の苦労も多いイメージです。

「普通に出荷した方がいいじゃん!」という声も、農家からはよく聞く意見ですね。

そんな中で、普通の出荷ももちろんしながら、収穫体験メインで利益を出している農家もいます。(今回のナス狩りの企画にも、たくさんのアドバイスをいただきました。)

その農園は、なんと年間5000人の収穫体験を1人1500円で受け入れているとのこと!

ほとんどが学校経由で小中学生の授業や野外体験の一環らしいですが、そういうお客さんもいるんですね。

下世話ですけど、出荷経費がかからずにこれだけの売上があったら、利益は相当残るのでは……ゴクリ。

しかしこの農園は、収穫体験をメインにしたことで「休みが増えたことが一番良かった」と話してくれました。

どこを目標にしてどういうお客さんを相手にするか、やはり農業は自由だなあと改めて感じましたね。

まとめ

私の周りでも、定番のいちご狩りやブルーベリー狩りの他にも、トマト狩りトウモロコシ狩りサツマイモ掘りなどやっている農家もいます。

考えることは農家皆一緒なんだなあと。

観光農園にしても収穫体験にしても、やっぱり出荷せずともお客さんが来てやってくれるスタイルは魅力を感じますね。

だんだん厳しくなってく農業情勢の中で、少しずつでも新しいことを取り入れながら変わっていかないとなあ。

この記事が少しでも参考になれば嬉しいです。

最後までお読みいただきありがとうございました。